刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 161

乙:眠いです。

今日の問題は

離島にあるA小学校は,昭和54年10月25日,東京の教材会社B社に対し同年11月3日開催の文化祭で使用する理科用教材(不特定物)を購入したいので,遅くとも文化祭の前日には到着するように送ってほしい旨の手紙を出した。B社はこれを受け取ったが返信することなく直ちに教材発送の準備を整え,同年10月30日,東京湾出港の貨物船に積み込んだ。同船は同年11月1日に前記離島に到着する予定であったが,途中,不可抗力によって生じた事故により同年11月2日に同島に到着した。同日,教材がA校に届いたので,梱包をといたところ,教材は前記事故により損壊しており,到底使用できる状態ではなかった。B社が東京港から発送した時点において,売買の目的物である教材は特定している。したがって,危険負担の債権者主義により,A小学校の代金債務は消滅しない。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?

甲:離島の問題、間違えすぎでしょ!

乙:民法401条1項は

債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。」

同条2項は

「前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、または債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。」

と、規定しています。

「債務者の『給付をするのに必要な行為』によって特定が生ずる時点は,本来債務者がどのような態様で引渡しをなすべきかによって異なる.引渡しをなすべき態様としては,持参債務・取立債務・送付債務の各々について議論されている.
(a)持参債務,つまり債務者が自ら債権者のところに持参すべき債務(例:家具店で机を購入し,自宅に届けてもらうことにした場合)では,債権者の住所地(履行地)に持参して提供したときに特定する.」

内田貴『民法Ⅲ』17頁

取立債務とは、債権者が目的物を取りに行く場合、送付債務とは、債権者・債務者の住所地以外の第三地に目的物を送付すべき場合をいいます。

同17-18頁

同法536条1項は

「前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。

同法534条1項は

特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。」

と、規定しています。


同法535条は、停止条件付双務契約における危険負担について、規定しています。

本問でB社が負う債務は、理科用教材をA小学校の住所地に持参すべき持参債務です。

特定が生ずる時点は、教材をAの住所で現実に提供したときです(401条2項)。

B社が、教材を貨物船に積み込んだ時点では特定していません。
そのため、534条1項の債権者主義は適用されません。

536条1項の債務者主義により、A小学校の代金債務は消滅します。

したがって、上記記述は、誤りです。