刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 473

乙:甲先生の事務所のウェブサイトのアソシエイトメッセージが更新されていたので、良かったです。

今日の問題は、プレからで、4問あります。

イ.土地の賃借人を相続し,この土地の占有権を取得した者は,例え被相続人の占有が自主占有であると過失なく信じた場合であっても,短期取得時効によりこの土地を取得することはできない。
ウ.他人の不動産を自己の所有と過失なく信じたAが死亡してBがAを相続し,さらにCがBを相続した場合,その不動産が他人の所有であることをC自身が知っていても,A・B・Cの占有を通算して10年を超えれば,Cは,短期取得時効を主張することができる。
エ.占有者が賃借権に基づき占有を取得した事実や外形的客観的に占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情が証明されれば,20年以上占有が継続したとしても,時効取得は認められない。
オ.農地法第5条により都道府県知事若しくは農業委員会の許可がなければ所有権が移転しない転用目的の農地売買の場合には,例え買主が代金を支払って引渡しを受け,買い受けた農地の占有を続けても,許可手続がとられていない以上,その農地を時効により取得することはできない。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:大貫卓也デザイン、なんちゃって!


乙:イについて、民法185条は

「権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。」

と、規定しています。

最判昭和46年11月30日は

「上告人らは、右訴外人の死亡により、本件土地建物に対する同人の占有を相続により承継したばかりでなく、新たに本件土地建物を事実上支配することによりこれに対する占有を開始したものというべく、したがつて、かりに上告人らに所有の意思があるとみられる場合においては、上告人らは、右訴外人の死亡後民法一八五条にいう「新権原ニ因リ」本件土地建物の自主占有をするに至つたものと解するのを相当とする。」

と、判示しています。


ウについて、民法187条1項は

「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。」

と、規定しています。

最判昭和53年3月6日は

「一〇年の取得時効の要件としての占有者の善意・無過失の存否については占有開始の時点においてこれを判定すべきものとする民法一六二条二項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、占有主体に変更があつて承継された二個以上の占有が併せて主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点においてこれを判定すれば足りる」

と、判示しています。

エについて、

「権原の性質上占有者に所有の意思がある場合を自主占有,ない場合を他主占有という.所有の意思は権原の性質から決まるもので,内心の意思ではない.(中略)所有権を時効取得するには,自主占有が継続する必要がある.」

内田貴『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』412頁

オについて、農地法5条柱書本文は

「農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。」

と、規定しています。

最判平成13年10月26日は

「農地を農地以外のものにするために買い受けた者は,農地法5条所定の許可を得るための手続が執られなかったとしても,特段の事情のない限り,代金を支払い当該農地の引渡しを受けた時に,所有の意思をもって同農地の占有を始めたものと解するのが相当である。 これを本件についてみると,上告人は,本件売買契約を締結した直後に本件農地の引渡しを受け,代金を完済して,自らこれを管理し,その後は被上告人に管理を委託し,又は賃貸していたのであるから,本件許可を得るための手続が執られなかったとしても,上告人は,所有の意思をもって本件農地を占有したものというべきである。」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、ウとエが正しく、イとオが誤りです。