乙:今日の問題は、サンプルからで、4問あります。
ア 民法上の代理行為を主張する者は,代理人がその行為の法律効果を本人に帰属させようとする意思を有し,かつ,代理人としての意思表示であることを表示したことを主張立証しなければならない。
イ いわゆる代理権濫用の場合,代理人には,その法律行為による利益を自己又は第三者に得させる意図があり,その意思表示の法律的効果を本人に帰属させようとする代理意思はない。
ウ 商行為の代理の場合,代理人に代理意思があることは不要であり,代理人が本人のためにすることを示さなくても,その行為は本人のために効力を生じる。
エ 代理人が本人のためにすることを示さずに民法上の代理行為をした場合,相手方において,代理人が本人のためにすることを知らず,かつ,知らなかったことについて過失がなかったときは,代理人と相手方との間にその意思表示の法律効果が発生し,代理人は,表示と内心の意思との不一致を理由とする錯誤の主張をすることができない。
甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?
甲:やねよーりーたーかーいこいのーぼーりー。。
乙:アについて、民法99条は
「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。」
と、規定しています。
「代理人Y1によってXとY2の間に保証契約が締結された場合は,
① 主たる債務の発生原因事実
② Y1がXとの間で①の債務を保証するとの合意をしたこと(法律行為)
③Y1の②の意思表示は書面によること
④ ②の合意の際,Y1がY2のためにすることを示したこと(顕名)
⑤ ②の合意に先立って,Y2がY1に対し,②の合意についての代理権を授与したこと(代理権の発生原因事実)
を主張立証する必要がある。」
司法研修所編『改訂 紛争類型別の要件事実』41頁
イについて
「代理人がその内心では自己または第三者の利益を図るため,しかし客観的には顕名により代理の形式はきちんとふんで,本来の権限内の行為をした場合を代理権濫用と呼ぶ。A会社の使用人Bが与えられた代理権を悪用し,あたかもその代理権の行使としてCから物品を仕入れ,それを他へ横流しし利益を図る行為などがそれにあたる。この場合,外形上は全く正常な代理権の行使であり,また,形式的に考えても本人のためにする意思はあるから(本人のためにする意思とは本人の利益を図る意思である必要はなく,効果を帰属させる意思をいう),その意味で原則として本人に効果が帰属することは免れえないといえる。」
安永正昭『民法Ⅰ総則』〔第3版補訂〕176頁
ウについて、商法504条は
「商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。」
と、規定しています。
エについて、民法100条は
「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。」
と、規定しています。
したがって、上記記述は、アとエが正しく、イとウが誤りです。