刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1442

乙:Nothing good come from this,
But I couldn’t resist,

出典:http://www.songlyrics.com/orianthi/frozen-lyrics/

感想:nothingは通常、単数扱いのようです。


今日の問題は、新司法試験平成22年民事系第54問イです。

偽造手形が振り出された場合,受取人が偽造者に本人名義で手形を振り出す権限があると信じるにつき正当な理由がなくても,受取人から当該手形の裏書譲渡を受けた第三者が,偽造者にこのような権限があると信じるにつき正当な理由があれば,当該第三者は,本人に手形債務の請求をすることができる。


甲先生、よろしくお願いします!


甲:最判昭和43年12月24日は

「原判決の確定するところによれば、被上告会社は、昭和三八年二月二八日代表取締役小栗為吉と同小栗為助とが共同して会社を代表する旨の登記をし、右登記は、昭和三九年一二月一七日小栗為吉の辞任によつて、翌一八日右共同代表の規定が廃止された旨の登記がされるまで継続したこと、右代表取締役小栗為吉は、昭和三九年一一月二五日、本件(一)の約束手形を上告人にあてて、また、(二)の約束手形を訴外戸上文恵にあてて各振り出し、(二)の手形については、右戸上文恵から、順次、訴外杉崎九三、同沼津センター株式会社松乃湯の各裏書を経て、上告人が本件(一)、(二)の手形の所持人となつたこと、本件各手形の振出人欄には、被上告会社の代表者の表示として代表取締役小栗為吉の記載があるにとどまり、共同代表者の他の一人である代表取締役小栗為助の記載を欠いていることがそれぞれ明らかである。右の事実関係によると、本件各手形は、共同代表取締役の一人にすぎない小栗為吉のみの代表名義で振り出されたものであるから、無権限による代表行為であつて、被上告会社に対しては原則としてその効力を生じないものといわなければならない。しかし、株式会社の代表取締役について共同代表の定めがあり、かつ、その旨の登記がある場合において、代表取締役の一人が単独で行なつた法律行為についても、商法二六二条の規定の類推適用が可能であると解すべきものであることは、当裁判所昭和四一年(オ)第一〇四二号、同四二年四月二八日第二小法廷判決(民集二一巻三号七九六頁)の示すとおりであつて、このことは、共同代表取締役の一部の者によつてなされた法律行為が手形行為である場合においても、その理を異にしないと解すべきである。そして、本件各手形の振出行為は、いずれも代表取締役の名称を付してなされたこと前示のとおりであつて、しかも、上告人は、原審において、被上告会社に共同代表の定めの登記がされていることを知らなかつたこと、および小栗為吉が被上告会社の社長と称し、被上告会社の主宰者であるところから、単独の代表権を有するものと信じていたことを主張していることは記録に徴して明らかであるから、右主張の事実が存在し、そのうえ、被上告会社において、当時、小栗為吉が被上告会社の社長と称して行動することを許容しまたは黙認していた等の事情が存在するものであれば、被上告会社は、本件各手形について、上告人に対し商法二六二条に基づき、振出人としての責に任ずる余地があるといわなければならない。
 そうであるとすると、商法二六二条の規定は、本件のように代表取締役について共同代表の定めがある場合には適用されないとの見解のもとに、上告人の請求を排斥した原判決には、同条の解釈を誤つた結果、審理を尽くさなかつた違法があり、右の違法は判決の結論に影響を及ぼすから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。」


最判昭和36年12月12日は

「約束手形が代理人によりその権限を踰越して振出された場合、民法一一〇条によりこれを有効とするには、受取人が右代理人に振出の権限あるものと信ずべき正当の理由あるときに限るものであつて、かかる事由のないときは、縦令、その後の手形所持人が、右代理人にかかる権限あるものと信ずべき正当の理由を有して居つたものとしても、同条を適用して、右所持人に対し振出人をして手形上の責任を負担せしめ得ないものであることは、大審院判例(大審院大正一三年(オ)第六〇一号、同一四年三月一二日判決、同院民集四巻一二〇頁)の示す所であつて、いま、これを改める要はない。
 而して原判決によれば、原審は、被上告寺の経理部長山田ギ存の代理人であつた訴外小笠原秋水がその権限外であるにも拘らず、右経理部長の記名印章を冒用して本件約束手形を振出し、その受取人である訴外小島安吉が本件約束手形の交付を受けた当時、右小笠原秋水において何等正当の権限なくしてこれを作成交付したものであることを十分察知して居つたものであるとの事実を認定して居る。
 されば右判例の趣旨よりすれば、右認定の事実関係の下においては、本件約束手形の被裏書人である上告人が、仮に所論の如く、右小笠原秋水に、本件約束手形振出を代理する権限あるものと信ずべき正当の理由を有して居つたとしても、被上告寺は、上告人に対し本件約束手形上の責任を負担しないものとなすべきである。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、誤りです。