刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

刑事裁判の歴史と展望あれこれを広めます https://mementomo.hatenablog.com/entry/39862573

しほうちゃれんじ 1623

乙:It will take a while
To make you smile

出典:https://genius.com/Beach-house-space-song-lyrics

感想:アルクによると、take a whileで、しばらく時間がかかるという意味だそうです。


今日の問題は、予備試験平成23年刑法第1問2と3です。

正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいもの(中略)
2.甲は,散歩中,仲の悪かった乙から大型犬をけしかけられたので,犬から逃げようとして,
偶然その場を通り掛かった丙を突き飛ばして走り去った。甲の行為により,丙は転倒して全治
約1週間を要する足首捻挫の傷害を負った。この場合,甲には正当防衛が成立する。
3.甲は,乙ら数名の男によって監禁されたが,監禁されて2週間後,たまたま見張りが乙一人になったので,監禁場所から脱出するため,乙の顔面を1回殴打して乙がひるんだ隙にそこから逃げた。この場合,甲には正当防衛が成立する。


甲先生、よろしくお願いします!


甲:刑法36条1項は

「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」

と、規定しています。


2について

「正当防衛の成立要件が緊急避難のそれよりも緩やかなのは,正当防衛は急迫不正の侵害者に対するものであるというところに根拠がある。」

山口厚『刑法』64頁


3について、最判昭和46年11月16日は

「刑法三六条にいう「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫つていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。これを本件についてみると、被告人は後藤と口論の末いつたん止宿先の旅館を立ち退いたが,同人にあやまつて仲直りをしようと思い、旅館に戻つてきたところ、後藤は被告人に対し、「小泉、われはまたきたのか。」などとからみ、立ち上がりざま手拳で二回ぐらい被告人の顔面を殴打し、後退する被告人に更に立ち向かつたことは原判決も認めているところであり、その際後藤は被告人に対し、加療一〇日間を要する顔面挫傷および右結膜下出血の傷害を負わせたうえ、更に殴りかかつたものであることが記録上うかがわれるから、もしそうであるとすれば、この後藤の加害行為が被告人の身体にとつて「急迫不正ノ侵害」にあたることはいうまでもない。」

と、判示しています。

「継続犯とは,構成要件的結果発生により犯罪が成立し,その結果が継続する間,犯罪が継続的に成立する犯罪をいう。監禁罪(刑220条)がその例であり,監禁状態が生じることによって監禁罪は成立するが,その状態が持続する限り,同罪は持続的・継続的に成立し,被害者が解放されて初めて犯罪は終了するのである。」

山口厚『刑法』29頁


したがって、上記記述は、2が誤りで、3が正しいです。