刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1017

乙:So come out of your cave walking on your hands
And see the world hanging upside down

出典:https://genius.com/Mumford-and-sons-the-cave-lyrics

感想:歌詞が難しい。


今日の問題は、司法試験平成30年刑法第5問エ.です。

借地人が,自己の借地内にある自己所有の店舗を増築する必要に迫られ,その借地内に突き出ている隣の家屋の屋根をその所有者の承諾なく切除した場合,自救行為として違法性が阻却され,建造物損壊罪は成立し得ない。

甲先生、よろしくお願いします!


甲:「自救行為とは,急迫不正の侵害が終了した後において,公的機関の保護を求める余地がなく,即時に行わなければ権利実現が困難になる例外的な場合に違法性阻却が認められる,実力による権利実現である。」

山口厚『刑法』67頁

最判昭和30年11月11日は

「(所論自救行為に関する原判決の判断は正当である。)」

札幌高函館支判昭28.11.10は

「被告人の本件切除行為は万止むを得ざる自救行為であつて公序良俗にも反しない程度のものであるから現行法においては違法性を阻却するものであつて原判決がこれを認めないのは理由不備であるといい、その理由として、被告人は小西の同意があつたものと信じてなした行為で善意であつたことは本件軒先の一部切除による小西の家屋の効用減殺の程度と、これを切除せざるために受ける損害の程度とは比較にならぬ程被告人の損害が甚大であるとして本件の効用価値の薄い屋根の一部の切除による僅少なる損害と、緊急止むなき状態において権利者が家屋増築によつて大衆に与うる利益とを比較考慮するならば本件の場合違法性なき自救行為として違法性を阻却すると主張するのであるが、本件被告人の所為が小西興太郎の承諾なきことを認識しながらなしたものであり又同人が承諾したものでもないことは前説示のとおりであり、かかる行為が他人の財産権を侵害するものであつて公序良俗に反することは言を待たないところである。被告人の切断した本件小西の玄関が被告人の借地内に突出していたことは本件記録により認め得られるが、仮にこれが所論のように小西興太郎の無許可の不法建築であつても、その侵害を排除するため法の救済によらずして自ら実力を用いることは法秩序を破壊し社会の平和を乱し、その弊害たるや甚しく現在の国家形態においては到底認容せらるべき権利保護の方法ではない。正当防衛又は緊急避難の要件を具備する場合は格別、漫りに明文のない自救行為の如きは許さるべきものではないのである。そして本件記録及び原裁判所で取調べた証拠によると、被告人は増築を設計する当初から小西所有の建物の玄関庇が突出していることが判つているにかかわらず被告人の意のままに設計増築し原判示所為に出たるものでその被告人の所為が正当防衛又は緊急避難の要件を具備していないことが明かである。その増築は倒産の危機を突破するためやむなくなしたものであり小西の損害は僅少で増築による被告人の受ける利益は多大であるというが如きは未だ法の保護を求めるいとまがなく且即時にこれを為すに非ざれば請求権の実現を不可能若しくは著しく困難にする虞がある場合に該当するとは認めることはできない,それゆえ、法律上の手続によらず自らの実力行使に出たる被告人の行為は違法という外なく従つて被告人の原判示所為を刑法第二百六十条の建造物損壊罪に問擬した原判決には所論のような理由不備等の違法は存在しない。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、誤りです。