刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 604

乙:今日の問題は、3問あります。

ア. Aが宝石をBに売り,その代金をBがCに支払うとの契約を締結し,Cが受益の意思表示をした場合,BがAの詐欺を理由にこの契約を取り消しても,CがAの詐欺について善意無過失であるときは,Bは,詐欺取消しをCに対抗することはできない。
イ. Aが宝石をBに売り,その代金をBがCに支払うとの契約を締結し,Cが受益の意思表示をした場合,Aが宝石をBに引き渡したが,Bが代金をCに支払わないときは,CはBに対して代金を自己に支払うよう請求することができるが,AもBに対して代金をCに支払うよう請求することができる。
ウ. Aが宝石をBに売り,代金は,AがDと連帯してCに対して負っている借入金債務を弁済するため,BがCに支払うとの契約を締結した場合,既にDがCに対する債務を弁済していたときは,Cが受益の意思表示をした後であっても,Aは,Bとの契約を合意解除することができる。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:させっくすって。

乙:アについて、民法537条1項は

「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。」

同法539条は

「債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。」

同法96条3項は

「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。

「無効・取消の効果を善意の第三者に対抗しえない場合(九四条ニ項・九六条三項)にも、第三者のためにする契約によって権利を取得する第三者は、善意・悪意を問わず対抗される。それは第三者の権利がその契約から直接に生じたものであって、無効または取り消された行為の外形を信じて新たな利害関係を取得したものではないからである。」

三和一博『民法(5)契約総論 〔第4版〕』132頁


イの前段について、民法537条は

「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。」

と、規定しています。

前段は正しいです。

イの後段について

「要約者A・諾約者B間においては通常の契約と同様の権利・義務が発生する。受益者Cは,受益の意思表示により(537条2項),Bに対して直接の請求権を取得するが,AもBに対してCへの履行を求める権利を失わない。」

磯村保『民法Ⅳ 債権各論〔第3版補訂〕』38頁

後段も正しいです。


ウについて、民法538条は

「前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。」

と、規定しています。

「受益の意思表示により第三者の権利が発生した後は,当事者はこれを変更したり消滅させたりすることはできない(538条).」

内田貴『民法Ⅱ 第2版 債権各論』80頁


したがって、上記記述は、アとウが誤りで、イが正しいです。