刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

刑事裁判の歴史と展望あれこれを広めます https://mementomo.hatenablog.com/entry/39862573

しほうちゃれんじ 1201

乙:It’s gonna take hard money
To do it up right, child

 

出典:James Ray – I've Got My Mind Set On You Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:George Harrisonがカヴァーしてヒット。 

 

今日の問題は、新司法試験平成22年民事系第62問3と4です。

 

【事 例】
Xは,A所有の建物をAから買い受けたと主張して,当該建物を占有しているYを被告として,所有権に基づき建物の明渡しを求める訴えを提起した。

3.YがAを賃貸人,Yを賃借人とする賃貸借契約書を提出して書証の申出をした場合において,Xが,当該契約書は真正に成立したことを認める旨を陳述したときは,裁判所は,当該契約書が真正に成立しなかったと認めることはできない。
4.Yが抗弁として,Aとの間で当該建物について賃貸借契約を締結した旨を主張し,Xがこれを認める旨を陳述した場合,裁判所は,賃貸借契約締結の事実が存在することを判決の基礎としなければならない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:ちんくちゃー(tincture)。。

 

乙:3について、最判昭和52年4月15日は

 

「 論旨は、所論の各書証の成立の真正についての被上告人の自白が裁判所を拘束す
るとの前提に立つて、右自白の撤回を許した原審の措置を非難するが、書証の成立
の真正についての自白は裁判所を拘束するものではないと解するのが相当であるか
ら、論旨は、右前提を欠き、判決に影響を及ぼさない点につき原判決を非難するに
帰し、失当である。」

 

と、判示しています。

 

 

4について、民事訴訟法179条は

 

「裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。」

 

と、規定しています。

 

「 Yが占有権原を有しないことは,明渡請求権の発生要件ではなく,Yが占有権原を有することが発生障害要件である。したがって,Yが占有権原を有することは,抗弁としてYが主張立証責任を負う(最判昭35.3.1民集14.3.327[20])。」

 

司法研修所『改訂 紛争類型別の要件事実』47頁

 

 

したがって、上記記述は、3が誤りで、4が正しいです。

しほうちゃれんじ 1200

乙:But did you know that when it snows
My eyes become large and
The light that you shine can't be seen?

 

出典:Seal – Kiss From a Rose Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:snowsをshowsと書いていた。

 

 

今日の問題は、新司法試験平成19年民事系第70問1と3です。

 

 Xは,「甲建物は,かつてAが所有していたが,同人が死亡し,同人の子で唯一の相続人であるXが相続した。しかるに,Yは何らの権原もなく,同建物を占有している。」と主張し,同建物の所有権に基づいて,Yに対して,同建物の明渡しを求める訴えを提起した。この事案に関する次の1から4までの各記述のうち,正しいものを2個選びなさい。 (中略) 
1. Yは,「Xが甲建物を所有していることは否認する。元所有者のAは, 生前Yに甲建物を売却した。」と主張した。裁判所は,証拠調べの結果,AはYではなく,Bに同建物を売却したと認めた場合でも,Bへの売買がされているのでXは同建物を所有していないとの理由で,Xの請求を棄却することはできない。
3. Yは,「Xが甲建物を所有していることは認めるが,Xは,元所有者のCから買い受けたものである。Xは,Yに同建物を賃貸し,引き渡した。」と主張した。裁判所は,証拠調べの結果,Xは,同建物を元所有者のCから買い受けたものであり,Aから相続したものではないと認めた場合には,XY間の建物賃貸借が認められないと判断したときでも,Xの請求を認容することはできない。

 

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:sextillion..

 

乙:1について

 

「① 法律効果の発生消滅に直接必要な事実(これを主要事実と呼ぶ)は、当事者の弁論に現われない限り、判決の基礎とすることができない(換言すれば、裁判所は、当事者によって主張されていない主要事実を判決の基礎とすることができない)。」

 

『重点講義 民事訴訟法 上〔第2版補訂版〕』405頁

 

「Xが所有権を前主Aから承継取得したと主張した場合に,Yが,Aがその不動産をもと所有していたことを認めた上で,YはAから承継取得したとして,YのAからの所有権取得原因事実を主張し,Yの対抗要件具備による所有権喪失の抗弁又は対抗要件の抗弁を主張する場合が考えられる」

 

司法研修所『改訂 紛争類型別の要件事実』48頁

 

3について

 

「Yが占有権原を有しないことは,明渡請求権の発生要件ではなく,Y が占有権原を有することが発生障害要件である。したがって,Y が占有権原を有することは,抗弁としてYが主張立証責任を負う(最判昭35.3.1民集14.3.327[20])。」

 

同47頁

 

 

したがって、上記記述は、1が正しく、3が誤りです。

しほうちゃれんじ 1199

乙:They come, they come to build a wall between us

 

出典:Crowded House – Don't Dream It's Over Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:ゆっくりした曲だが、聞き取りづらい。

 

 

今日の問題は、新司法試験平成21年刑事系第36問ウエオカです。

 

【事 例】
 被告人甲は,Vを殺害した殺人被告事件で起訴されたが,同被告事件の第一回公判期日において,犯行日のアリバイを主張し,自分は犯人ではない旨述べた。
 同被告事件の第×回公判期日において,検察官が,「被告人がVを殺害したこと」を立証趣旨として,Aを証人尋問したところ,Aは,「事件のあった翌日,甲が私に対し,Vを殺したと言った。」と証言した(A証言)。
 次に,同被告事件の第×回公判期日において,検察官が,「Wが犯行時間帯に犯行現場付近で被告人を目撃したこと」を立証趣旨として,Bを証人尋問したところ,Bは,「友人のWが私に対し,事件直後に現場付近で甲を見たと言っていた。」と証言した(B証言)。
 次に,同被告事件の第×回公判期日において,弁護人が,「被告人が犯行日に旅行中でアリバイがあること」を立証趣旨として,Cを証人尋問したところ,Cは,「甲が私に対し,事件があった日には旅行中であったと言っていた。」と証言した(C証言)。
 なお,弁護人は,Aの証人尋問の終了までに前記A証言を,Bの証人尋問終了までに前記B証
言をそれぞれ証拠とすることに異議を申し立て,また,検察官は,Cの証人尋問の終了までに前記C証言を証拠とすることに異議を申し立てた。
【記 述】
ウ.B証言は,Wが公判期日においてWがBにした供述と相反する供述をしたときで,かつ,公判期日における供述よりもWがBにした供述を信用すべき特別の情況の存するときに限り,これを証拠とすることができる。
エ.B証言は,Wが所在不明であるため公判期日において供述することができず,かつ,Wの供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるときは,Wの供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り,これを証拠とすることができる。
オ.C証言は,被告人のCに対する供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り,これを証拠とすることができる。
カ.C証言は,被告人が犯行日に旅行中でアリバイがあることを立証するための証拠とはなり得ないが,A証言中の被告人のAに対する供述の証明力を争うためには,これを証拠とすることができる。

 

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

 

甲:むきだし。。

 

 

 

乙:ウとエについて、刑事訴訟法321条1項3号は

 

「」

 

と、規定しています。

 

オとカの前段について、322条1項は

 

「」

 

カの後段について、328条1項は

 

「」

 

と、規定しています。

 

最判平成18年11月7日は

 

「」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、ウとカが誤りで、エとオが正しいです。

しほうちゃれんじ 1198

乙:Mother has to iron his shirt, then she sends the kids to school
Sees them off with a small kiss

 

出典:Madness – Our House Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:日本人も挨拶にkissするようになったら欧米化完成か。

 

今日の問題は、司法試験平成25年刑事系第33問エです。

 

 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(中略)
【事 例】
甲及び乙は,共謀の上,平成24年12月5日午前1時頃,H市内のコンビニエンスストア「T」において,同店店員Vから現金10万円を強取したとしてH地方裁判所に起訴され,併合審理されることとなった。この審理において,V,甲の妻A及び知人Bに対する証人尋問が行われたところ,Vは,「2人組の犯人が店から出て行く際,犯人の1人がもう1人の犯人に対し,『①甲,早く逃げるぞ。』と言っていた。」旨を証言した。次に,Aは,「平成24年12月8日午後3時頃,自宅において,甲から『②3日前の午前1時頃,乙と一緒に,H市内のコンビニエンスストア「T」で,果物ナイフを店員に突き付けて現金10万円を奪ってきた。見付からないと思っていたが,乙が捕まった。ひょっとしたら,乙が自分のことを話すかもしれない。そうなると,警察が来るだろう。頼む。③3日前の午前1時頃には,俺が自宅で寝ていたということにして欲しい。』と言われた。」旨を証言した。次に,Bは,「平成24年12月4日,甲から,『④明日の午前1時頃,H市内のコンビニエンスストアで強盗をしないか。』と言われたが,断った。」旨を証言した。また,乙に対する被告人質問において,乙は,「甲と一緒に強盗をした際,甲が店員に『⑤金を出せ。出さないと殺すぞ。』と言っていた。」旨を供述した。
【記 述】
エ.下線部④の発言は,要証事実を「甲がBに強盗を実行することを持ち掛けたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:etch..

 

乙:「被告人Xと共犯者YによるV殺害にかかる殺人事件の公判において,「事件の数日前,XがYに対して『Vはもう殺してもいいやつだ。』『Vへの攻撃はけん銃で行うが,慎重に調査し計画しよう。』と話しかけるのを聞いた。」とWが証言したとする(類似の例として,最判昭和38・10・17刑集17巻10号1795頁参照)。このW証言を,まず,Xが事前にVに対する敵意や殺害意思ないし計画を持っていたことを立証事項として用いることが考えられる。実体法上の「共謀」概念の本質を主観的なもの(犯罪の共同遂行の合意・意思連絡)と捉える立場を前提に,共謀の立証の一内容として共謀者(の1人)の意思・計画を証明する場合などである(単独犯における犯人の意図・計画を立証する場合も同様である)。この場合,W証言中のX供述は,Xの供述当時の心理状態の供述であるから,前述(4)の通説によれば,W証言は非伝聞と位置づけられる。

 他方,W証言中のX供述はXとYとの間でのV殺害に関する謀議行為そのものだとみて,これを立証事項としてW証言を用いることも考えられる。「共謀」の本質を客観的なものと捉える立場を前提に,共謀の立証のため,このような客観的な謀議行為を証明する場合などである。この場合は,Xが上記発言をしたこと自体を推認しようとするのであるから,W証言はーーいわば純粋なーー非伝聞と位置づけられる。」

 

堀江慎司『刑事訴訟法』354頁

 

 

したがって、上記記述は、正しいです。

しほうちゃれんじ 1197

乙:Sweet dreams are made of this
Who am I to disagree?

 

出典:Eurythmics – Sweet Dreams (Are Made of This) Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:現実的な歌詞。

 

 

今日の問題は、司法試験平成24年刑事系第32問アです。

 

次の【事例】に関する甲を有罪とするのに必要な甲の自白の補強証拠について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。なお,甲の自白及び各証拠について,その証拠能力及び証明力には問題はないものとする。(中略)
【事 例】
甲は,平成23年4月3日,H警察署を訪れ,同署司法警察員Xに対し,「乙と一緒にV1を殺害する計画を立てた。その計画は,乙がV1をH市内の岸壁に呼び出し,私が普通乗用自動車を運転してV1を跳ね飛ばして殺害し,V1の死体を海に捨てるというものであった。実際,私は,この計画どおり,平成23年2月3日午後9時頃,前記岸壁において,普通乗用自動車を運転し,乙が呼び出したV1を跳ね飛ばして殺害し,乙と一緒にV1の死体を海に捨てた。ちなみに,私は,これまで,一度も運転免許を取得したことがない。また,私は,平成22年12月8日,H市内に
あるアパートの一室に侵入して現金10万円と時計1個を盗んだ。その後に確認したところ,私が盗みに入ったアパートの住人はV2だと分かった。」などと,道路交通法違反(無免許運転),殺人,死体遺棄,住居侵入,窃盗の罪を自白した。そこで,司法警察員Xは,この自白を内容とする供述調書を作成した。その後,甲は,平成23年4月5日,司法警察員Xに述べたことと同じ内容を記載した知人A宛ての手紙を作成した上,これをAに郵送した。
【記 述】
ア.甲を道路交通法違反(無免許運転)の罪で有罪とするには,甲が無免許であることについての補強証拠が必要不可欠であり,この証拠がない限り,甲を道路交通法違反(無免許運転)の罪で有罪とする余地はない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:drench..

 

乙:刑事訴訟法319条2項は

 

「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」

 

と、規定しています。

 

 

最判昭和42年12月21日は

 

「 弁護人元村和安の上告趣意は、憲法三八条三項違反を主張するが、判決裁判所の
公判廷における被告人の自白が、同条項にいわゆる「本人の自白」に含まれないこ
とは、当裁判所大法廷判決(昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日、集二巻
九号一〇一二頁。昭和二六年(れ)第二四九五号同二七年六月二五日、集六巻六号
八〇六頁)の明らかにするところであり、本件においては、第一審公判廷において
被告人が自白しているのであるから、所論は理由がない。
 その余の論旨は、憲法三一条違反を主張する点もあるが、実質は、すべて単なる
法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由に当ら
ない。(原初決は、道路交通法六四条、一一八条一項一号のいわゆる無免許運転の
罪について「無免許という消極的身分の如きその主観的側面については、被告人の
自白だけでこれを認定して差支えないと解するのが相当」であると判示し、被告人
が免許を受けていなかつた事実については、補強証拠を要しない旨の判断を示して
いる。しかしながら、無免許運転の罪においては、運転行為のみならず、運転免許
を受けていなかつたという事実についても、被告人の自白のほかに、補強証拠の存
在することを要するものといわなければならない。そうすると、原判決が、前記の
ように、無免許の点については、被告人の自白のみで認定しても差支えないとした
のは、刑訴法三一九条二項の解釈をあやまつたものといわざるを得ない。ただ、本
件においては、第一審判決が証拠として掲げたAの司法巡査に対する供述調書に、
同人が、被告人と同じ職場の同僚として、被告人が運転免許を受けていなかつた事
実を知つていたと思われる趣旨の供述が記載されており、この供述は、被告人の公
判廷における自白を補強するに足りるものと認められるから、原判決の前記違法も結局、判決に影響を及ぼさないものというべきである。)」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、正しいです。

しほうちゃれんじ 1196

乙:Inside her there's longing
This girl's an open page
Book marking, she's so close now
This girl is half his age

 

出典:The Police – Don't Stand So Close to Me Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:教師と生徒の恋愛の歌。

 

 

今日の問題は、新司法試験平成21年刑事系第32問オです。

 

【事 例】
 Vの死体が発見され,司法解剖の結果,Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後,警察は,甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により,甲を逮捕したが,乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は,取調べに対し,自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。
捜査を尽くしたところ,検察官は,甲及び乙が共謀してVを殺害し,殺害の実行行為者が甲であると認定したが,犯行日時については,「平成○年3月15日ころから同月18日ころまでの間」,犯行場所については,「H市内又はその周辺」,犯行方法については,「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため,検察官は,甲の勾留満期日に,以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
 被告人甲は,乙と共謀の上,平成○年3月15日ころから同月18日ころまでの間,H市内又はその周辺において,Vに対し,殺意をもって,何らかの方法でVの頸部を圧迫し,よって,そのころ,同所付近において,Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
【記 述】

オ.検察官が,<公訴事実>につき,「・・・殺意をもって,被告人甲が,何らかの方法で・・・」と殺害の実行行為者を甲と特定する旨の訴因変更をした後,裁判所が,その実行行為者につき,「被告人甲又は乙あるいはその両名において」と択一的に認定するには,必ず訴因変更の手続を経なければならず,その手続を経ないで認定した場合には訴訟手続の法令違反がある。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:Route 66..

 

乙:最決平成13年4月11日は

 

 「 次に,実行行為者につき第1審判決が訴因変更手続を経ずに訴因と異なる認定を
したことに違法はないかについて検討する。訴因と認定事実とを対比すると,前記
のとおり,犯行の態様と結果に実質的な差異がない上,共謀をした共犯者の範囲に
も変わりはなく,そのうちのだれが実行行為者であるかという点が異なるのみであ
る。そもそも,殺人罪の共同正犯の訴因としては,その実行行為者がだれであるか
が明示されていないからといって,それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべ
き事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられるから,訴因において実行行為
者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても,審判対象の画定という見
地からは,訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ,【要旨
2】実行行為者がだれであるかは,一般的に,被告人の防御にとって重要な事項で
あるから,当該訴因の成否について争いがある場合等においては,争点の明確化な
どのため,検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ,
検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上,判決においてそれと実質
的に異なる認定をするには,原則として,訴因変更手続を要するものと解するのが
相当である。しかしながら,実行行為者の明示は,前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから,少なくとも,被告人の防御の具体的な状況等の審理の
経過に照らし,被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ,かつ,判決で
認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益である
とはいえない場合には,例外的に,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行
行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。
 そこで,本件について検討すると,記録によれば,次のことが認められる。第1
審公判においては,当初から,被告人とAとの間で被害者を殺害する旨の共謀が事
前に成立していたか,両名のうち殺害行為を行った者がだれかという点が主要な争
点となり,多数回の公判を重ねて証拠調べが行われた。その間,被告人は,Aとの
共謀も実行行為への関与も否定したが,Aは,被告人との共謀を認めて被告人が実
行行為を担当した旨証言し,被告人とAの両名で実行行為を行った旨の被告人の捜
査段階における自白調書も取り調べられた。弁護人は,Aの証言及び被告人の自白
調書の信用性等を争い,特に,Aの証言については,自己の責任を被告人に転嫁し
ようとするものであるなどと主張した。審理の結果,第1審裁判所は,被告人とA
との間で事前に共謀が成立していたと認め,その点では被告人の主張を排斥したも
のの,実行行為者については,被告人の主張を一部容れ,検察官の主張した被告人
のみが実行行為者である旨を認定するに足りないとし,その結果,実行行為者がA
のみである可能性を含む前記のような択一的認定をするにとどめた。【要旨3】以
上によれば,第1審判決の認定は,被告人に不意打ちを与えるものとはいえず,か
つ,訴因に比べて被告人にとってより不利益なものとはいえないから,実行行為者
につき変更後の訴因で特定された者と異なる認定をするに当たって,更に訴因変更
手続を経なかったことが違法であるとはいえない。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、誤りです。

しほうちゃれんじ 1195

乙:Woo, child, tired of the bullshit
Go on, dust your shoulders off, keep it moving

 

出典:Lizzo – Good as Hell Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:流行の歌。

 

今日の問題は、新司法試験平成21年刑事系第26問エです。

 

捜索・差押えに関する次のアからエまでの各記述につき,処分を受ける者である甲が各記述中の処分を拒否している場合に,事前に裁判官から発付された( )内の捜索差押許可状によって当該処分を行うことが許される場合には1を,許されない場合には2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(中略)

エ.被疑者甲が覚せい剤を所持した事件で甲方を捜索したところ,立会人である甲の支離滅裂な言動から甲に覚せい剤使用の疑いが生じたので,司法警察員が,甲から尿を採取するため,身柄を拘束されていない甲を甲方から採尿に適する最寄りの病院まで連れて行くこと。[№52]
(差し押さえるべき物を覚せい剤とする甲方に対する捜索差押許可状)

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:こよいこそはとよろこびました。。

 

 

乙:最決昭和55年10月23日は

 

「 二 尿を任意に提出しない被疑者に対し、強制力を用いてその身体から尿を採取
することは、身体に対する侵入行為であるとともに屈辱感等の精神的打撃を与える
行為であるが、右採尿につき通常用いられるカテーテルを尿道に挿入して尿を採取
する方法は、被採取者に対しある程度の肉体的不快感ないし抵抗感を与えるとはい
え、医師等これに習熟した技能者によつて適切に行われる限り、身体上ないし健康
上格別の障害をもたらす危険性は比較的乏しく、仮に障害を起こすことがあつても
軽微なものにすぎないと考えられるし、また、右強制採尿が被疑者に与える屈辱感
等の精神的打撃は、検証の方法としての身体検査においても同程度の場合がありう
るのであるから、被疑者に対する右のような方法による強制採尿が捜査手続上の強
制処分として絶対に許されないとすべき理由はなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存
在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照
らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、
適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、そ
の実施にあたつては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施
されるべきものと解するのが相当である。
そこで、右の適切な法律上の手続について考えるのに、体内に存在する尿を犯罪
の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべき
であるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべき
である。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・
差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体
検査令状に関する刑訴法二一八条五項が右捜索差押令状に準用されるべきであつて令状の記載要件として強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により
行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。
 三 これを本件についてみるのに、覚せい剤取締法四一条の二第一項三号、一九
条に該当する覚せい剤自己使用の罪は一〇年以下の懲役刑に処せられる相当重大な
犯罪であること、被告人には覚せい剤の自己使用の嫌疑が認められたこと、被告人
は犯行を徹底的に否認していたため証拠として被告人の尿を取得する必要性があつ
たこと、被告人は逮捕後尿の任意提出を頑強に拒み続けていたこと、捜査機関は、
従来の捜査実務の例に従い、強制採尿のため、裁判官から身体検査令状及び鑑定処
分許可状の発付を受けたこと、被告人は逮捕後三三時間経過してもなお尿の任意提
出を拒み、他に強制採尿に代わる適当な手段は存在しなかつたこと、捜査機関はや
むなく右身体検査令状及び鑑定処分許可状に基づき、医師に採尿を嘱託し、同医師
により適切な医学上の配慮の下に合理的かつ安全な方法によつて採尿が実施された
こと、右医師による採尿に対し被告人が激しく抵抗したので数人の警察官が被告人
の身体を押えつけたが、右有形力の行使は採尿を安全に実施するにつき必要最小限
度のものであつたことが認められ、本件強制採尿の過程は、令状の種類及び形式の
点については問題があるけれども、それ以外の点では、法の要求する前記の要件を
すべて充足していることが明らかである。」

 

最決平成6年9月16日は

 

「午後三時二六分ころ、本件現場で指揮を執っていた会津若松警察署E幹警部
が令状請求のため現場を離れ、会津若松簡易裁判所に対し、被告人運転車両及び被
告人の身体に対する各捜索差押許可状並びに被告人の尿を医師をして強制採取させ
るための捜索差押許可状(以下「強制採尿令状」という。)の発付を請求した。午後五時二分ころ、右各令状が発付され、午後五時四三分ころから、本件現場におい
て、被告人の身体に対する捜索が被告人の抵抗を排除して執行された。」

 

「 (二) 身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実
上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状の効力として、採尿に適する
最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を
行使することができるものと解するのが相当である。けだし、そのように解しない
と、強制採尿令状の目的を達することができないだけでなく、このような場合に右
令状を発付する裁判官は、連行の当否を含めて審査し、右令状を発付したものとみ
られるからである。その場合、右令状に、被疑者を採尿に適する最寄りの場所まで
連行することを許可する旨を記載することができることはもとより、被疑者の所在
場所が特定しているため、そこから最も近い特定の採尿場所を指定して、そこまで
連行することを許可する旨を記載することができることも、明らかである。
 本件において、被告人を任意に採尿に適する場所まで同行することが事実上不可
能であったことは、前記のとおりであり、連行のために必要限度を超えて被疑者を
拘束したり有形力を加えたものとはみられない。また、前記病院における強制採尿
手続にも、違法と目すべき点は見当たらない。
 したがって、本件強制採尿手続自体に違法はないというべきである。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、許されないです。