刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 552

乙:今日の問題は

偽造公文書を相手方に示して錯誤に陥れ,相手方から現金の交付を受けた場合,偽造公文書行使罪は詐欺罪に吸収され,詐欺罪のみが成立する。

甲:りんく・れい?


乙:刑法54条1項は

「一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。」

同法155条1項は

「行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。」


同法158条1項は

「第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。」

同法246条は

「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」

と、規定しています。

最決昭42年8月28日は

「被告人は、Aから金員を騙取するために、抵当権設定登記申請手続を委任する旨のB名義の委任状を偽造し、これを関係書類とともに登記官吏に提出して行使し、登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使させるとともに、右Aに対し、抵当権設定登記を経由した事実を証明する登記済権利証を示して、同人をその旨誤信させ、よつて同人から、借用金名下に現金七〇万円を騙取したというのであつて、右公正証書原本不実記載罪およびその行使罪と詐欺罪とは、罪質上通例手段結果の関係にあるものと認められるから、右数罪は、刑法五四条一項後段のいわゆる牽連犯に当るものといわなければならない(昭和七年四月一一日大審院判決、刑集一一巻上三四九頁参照)。」

したがって、上記記述は、誤りです。