刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1191

乙:I want you back for good

 

出典:Take That – Back for Good Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:for goodがgirlに聞こえていた。

 

今日の問題は、新司法試験平成21年刑事系第9問3と5です。

 

3.甲は,A会社の経理担当者として,同社のパソコン記憶装置内の会計帳簿ファイルにデータを入力する権限を有していたが,自己の横領行為を隠ぺいするため,同ファイルに虚偽のデータを入力して記憶させた。甲は,私電磁的記録である同ファイルにデータを入力する権限を有しているので,甲には私電磁的記録不正作出罪は成立しない。
5.Aの代理人でない甲は,行使の目的で,「A代理人甲」と署名し,その横に「甲」と刻した印鑑を押してA所有の不動産の売買契約書を作成した。同契約書については,Aが作成名義人であるので,甲には有印私文書偽造罪が成立する。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

 

甲:3について、刑法161条の2第1項は

 

「人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

 

と、規定しています。

 

5について、刑法159条1項は

 

「行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」

 

と、規定しています。

 

 

大判明治42年6月10日は

 

「原判決ニ依レハ被告ハ小板久馬吉ヨリ同人ノ署名アル賣渡價格二百圓ノ賣渡契約書ヲ受取リ同金員ニテ本件電話ノ買戻約款附賣渡ヲ爲スコトヲ依頼セラレタル事實ハアレトモ右久馬吉ノ代人名義ニテ岩橋繁藏宛ノ賣渡價格三百圓ノ賣渡契約書ヲ作成スルコトヲ依頼セラレタル事實ハ之レナキモノナレハ從テ被告ニ該契約書ヲ作成スルノ權限毫モ存スルコトナク前段ニ所謂被告カ賣渡ヲ依頼セラレタル事實アルノ故ヲ以テ右契約書作成ノ權限ヲ得タルモノト速斷スルコト能ハサルヤ辯ヲ要セスシテ明カナリ而シテ凡ソ他人ノ代理者タル資格ヲ以テ文書ヲ作成スル場合ニ於テ其代理者ハ自己ノ爲メニ之ヲ作成スルモノニアラスシテ本人即チ被代理者ノ爲メニ之ヲ作成スルモノナレハ其文書ハ代理者其人ノ文書ニアラスシテ本人ノ文書ニ屬シ從テ該文書ハ代理者ニ對シ其效力ヲ生スルモノニアラスシテ本人ニ對シ其效力ヲ生スルモノト論定セサルヘカラス故ニ苟クモ他人ノ代理者タル資格ヲ詐リ文書ヲ作成スルニ於テハ其效果ハ直接ニ他人ノ署名ヲ詐リ文書ヲ作成シタル場合ト敢テ擇フ所ナキヲ以テ刑法第百五十九條第一項所定ノ犯罪中ニハ前記ノ所爲ヲモ包含スルモノニシテ右ハ本院ニ於テ既ニ判示シタル趣旨ナリトス(明治四十一年(れ)第八三九號事件、同年十一月十日判決)左レハ原判決ニ於テ被告カ小板久馬吉ノ代理者タル資格ヲ詐リ本件ノ契約書ヲ作成シテ之ヲ行使シタル所爲ヲ私文書ノ僞造及行使ノ罪ヲ構成スルモノト爲シタルハ相當ナルモ其所爲ニ擬スルニ刑法第百五十九條第一項ヲ以テセスシテ同條第三項ヲ以テシタルハ擬律ニ錯誤アル裁判タルヲ免レス何トナレハ右所爲ハ同條第一項ニ規定セル犯罪中ニ包含スルモノト解釋スヘキコト前示説明ノ如クナル以上ハ其所爲ニ對シテハ同條項ヲ適用スヘキハ當然ニシテ同條第三項ヲ適用スヘキモノニアラサルコト言ヲ俟タサレハナリ故ニ原判決ハ此點ニ於テ結局破毀セラルヘキ理由アルモノトス」

 

最決昭和45年9月4日は

 

「 他人の代表者または代理人として文書を作成する権限のない者が、他人を代表も
しくは代理すべき資格、または、普通人をして他人を代表者もしくは代理するもの
と誤信させるに足りるような資格を表示して作成した文書は、その文書によつて表
示された意識内容にもとづく効果が、代表もしくは代理された本人に帰属する形式
のものであるから、その名義人は、代表もしくは代理された本人であると解するの
が相当である(明治四二年六月一〇日大審院判決、判決録一五輯七三八頁参照)。
ところで、原判決の是認した第一審判決は、その罪となる事実の第一として、昭和
三八年八月六日に開かれた学校法人B理事会は、議案のうち、理事任免および理事
長選任に関する件については結論が出ないまま解散したもので、被告人Aを理事長
に選任したり、同被告人に、理事署名人として当日の理事会議事録を作成する権限
を付与する旨の決議もなされなかつたのにかかわらず、被告人らは、行使の目的を
もつて、理事会決議録と題し、同日山口県C高等学校理科室で行なわれた理事会に
おいて、被告人Aを理事長に選任し、かつ、同被告人を議事録署名人とすることを
可決したなどと記載し、その末尾に、理事録署名人Aと記載し、その名下に被告人
Aの印を押し、もつて、同被告人において権限のなかつた理事会議事録について署名人の資格を冒用し、理事会議事録署名人作成名義の理事会決議録なる文書を偽造
したと認定判示しているのである。そして、右理事会決議録なる文書は、その内容
体裁などからみて、学校法人B理事会の議事録として作成されたものと認められ、
また、理事録署名人という記載は、普通人をして、同理事会を代表するものと誤信
させるに足りる資格の表示と認められるのであるから、被告人らは、同理事会の代
表者または代理人として同理事会の議事録を作成する権限がないのに、普通人をし
て、同理事会を代表するものと誤信させるに足りる理事録署名人という資格を冒用
して、同理事会名義の文書を偽造したものというべきである。したがつて、前記の
とおり、これを理事会議事録署名人作成名義の文書を偽造したものとした第一審判
決およびこれを是認した原判決は、法令の解釈適用を誤つたものといわなければな
らない。
 また、右のような、いわゆる代表名義を冒用して本人名義の文書を偽造した場合
において、これを、刑法一五九条一項の他人の印章もしくは署名を使用してしたも
のとするためには、その文書自体に、当該本人の印章もしくは署名が使用されてい
なければならないわけである。ところが、原判決の是認した第一審判決は、前記の
とおり認定判示しているだけで、学校法人B理事会の印章もしくは署名が使用され
たとのことは判示していないのである。しかも、記録をみても、前記理事会決議録
なる文書に、右の印章や署名が使用されていたと認むべき証跡は存在しない。そう
すると、前記罪となる事実を同条項に問擬した第一審判決およびこれを是認した原
判決は、法令の解釈適用を誤つたものというほかはない。
 しかし、前記罪となる事実は、同条三項に該当するものであり、また、このほか
にも同条一項に該当する罪が存在し、処断刑にも変わりがないから、右の違法はい
まだ判決に影響を及ぼすものとは認められない。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、3が誤りで、5が正しいです。