刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 754

乙:答練面倒ですね。


今日の問題は、予備試験からで、4問あります。

被告人甲以外の者の供述を録取した次のアからオまでの各調書のうち,刑事訴訟法第321条第1項第1号の裁判官の面前における供述を録取した書面は幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(中略)
ア.第1回公判期日前の証人尋問調書
イ.民事事件における証人尋問調書
ウ.乙の刑事事件における証人尋問調書
エ.乙の刑事事件における被告人質問調書
オ.少年丙の保護事件における証人尋問調書
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:いーとぅーって。。


乙:刑事訴訟法321条1項1号は

「被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の六第一項及び第二項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。」

と、規定しています。


アについて、最大決昭和25年10月4日は

「 同第二点は、右Aの証人訊問調書は、刑訴二二八条二項により捜査に支障を生ずる虞があるとの理由で、被疑者、弁護人等に反対尋問の機会を与えないで作成されたものであるが、右刑訴の規定は、憲法三七条二項に違反する無効の規定であるから、右調書を適法とする原決定は、右憲法の規定に違反すると主張する。
しかし、憲法三七条二項は、刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられると規定しているのは、裁判所の職権により又は訴訟当事者の請求により喚問した証人につき、反対尋問の機会を充分に与えなければならないというのであつて、反対尋問の機会を与えない証人その他の者(被告人を除く)の供述を録取した書類は絶対に証拠とすることは許されないという意味をふくむものでないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第八三三号同二四年五月一八日大法廷判決)。しかし記録によれば、本件においては、所論の証人Aは、検察官の請求により、原審公判廷において尋問せられ、被告人側の反対尋問にも充分にさらされたことが明白である。従つてこの点において、憲法三七条二項の要請は充たされたものと認めることができる。原審は、唯、右証人がその公判廷において所論裁判官の面前における同証人の供述(刑訴二二七条、二二八条によるもの)と異つた供述を為した為に、検察官の請求により、刑訴三二一条一項一号によつて右裁判官の面前における供述を録取した書面即ち所論証人尋問調書を証拠とすることができるものとして、これを証拠調する旨の決定をした迄のことであつて、原審のかかる措置には何等違法の廉はない。原決定は正当で論旨は理由がない。」


と、判示しています。


イとウとオについて、最決昭和29年11月11日は

「弁護人毛利将行の上告趣意第一点は違憲をいうが、原審で主張も判断もなく、従つて、原判決が所論解釈を誤つたとの非難は、その前提を欠くものであり、同第二点は単なる訴訟法違反の主張(刑訴三二一条一項一号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」とは、当該事件において作成されたものであると他の事件において作成されたものであるとを問わないものと解するを相当とする。されば、原判決には所論の訴訟法違反は認められない。)であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。」

と、判示しています。


エについて、最決昭和57年12月17日は


「 なお、刑訴法三二一条一項一号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」には、被告人以外の者に対する事件の公判調書中同人の被告人としての供述を録取した部分を含むと解するのが相当である。」

と、判示しています。


したがって、正解は6です。