刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1829

乙:今日の問題は、新司法試験平成21年公法系第18問ウです。

条例と法律の関係に関する(中略)
ウ.憲法第31条により刑罰及びこれを科す手続は「法律」で定める必要があるが,この「法
律」には,法律に限らず,その授権を受けた下位法令も含まれる。そして,条例は住民の代表である議会が制定する自主立法として法律に類するから,法律が相当程度具体的に限定して授権している場合には,条例により刑罰及びこれを科す手続を定めることができる。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:Stand back and watch them disappear.

出典:https://youtu.be/3SdJGA2oNnw

感想:アルクによると、stand backは、後ろに[へ]下がる、後ずさる、身を引く、近づかない、距離を置く、尻込みする、だそうです。


乙:憲法31条は

「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」

同法73条6号は

「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」

と、規定しています。


前段について、最大判昭和37年5月30日は

「わが憲法の下における社会生活の法的規律は、通常、基本的なそして全国にわたり画一的効力を持つ法律によつてなされるが、中には各地方の自然的ないし社会的状態に応じその地方の住民自身の理想に従つた規律をさせるためこれを各地方公共団体の自治に委ねる方が一層民主主義的かつ合目的的なものもあり、また、ときには、いずれの方法によつて規律しても差支えないものもあるので、憲法は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定めるべく(憲法九二条)、これに議会を設置し、その議員、地方公共団体の長等は、その住民が直接これを選挙すべきもの(同九三条)と定めた上、地方公共団体は、その事務を処理し行政を執行する等の権能を有するほか、法律の範囲内で条例を制定することができる旨を定めたのである(同九四条)(昭和二九年(あ)第二六七号同三三年一〇月一五日大法廷判決、刑集一二巻一四号三三〇六頁参照)。すなわち、地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき(同九二条)、直接憲法九四条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法に外ならない。従つて条例を制定する権能もその効力も法律の認める範囲を越えることはできないけれども、法律の範囲内にあるかぎり、条例はその効力を有するものといわなければならない(昭和二六年(あ)第三一八八号同二九年一一月二四日大法廷判決、刑集八巻一一号一八七五頁参照)。
 第一審判決認定事実に適用され原審が合憲合法とした条例は、昭和二五年一二月一日公布施行にかかる大阪市条例第六八号街路等における売春勧誘行為等の取締条例(以下本件条例という)二条一項であつて、右条項は、売春の目的で街路その他公の場所において他人の身辺につきまとい又は誘う行為に対し五千円以下の罰金又は拘留に処すべき旨を規定するのであるところ、地方自治法二条二項、三項は風俗又は清潔を汚す行為の制限その他の保健衛生、風俗のじゆん化に関する事項を処理すること(同三項七号)ならびに、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること(同項一号)が普通地方公共団体(以下地方公共団体という)の処理する行政事務に属する旨を明定するとともに、同法一四条一項、五項は、地方公共団体は法令に特別の定があるものを除く外、その条例中に、条例違反者に対し二年以下の懲役若しくは禁錮、十万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができると定めており、被告人の本件行為当時本件条例二条一項所定の事項に関し法令に特別の定がなかつたことは明らかである。
 論旨は、右地方自治法一四条一項、五項が法令に特別の定があるものを除く外、その条例中に条例違反者に対し前示の如き刑を科する旨の規定を設けることができるとしたのは、その授権の範囲が不特定かつ抽象的で具体的に特定されていない結果一般に条例でいかなる事項についても罰則を付することが可能となり罪刑法定主義を定めた憲法三一条に違反する、と主張する。
 しかし、憲法三一条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法七三条六号但書によつても明らかである。ただ、法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならないことは、いうまでもない。」

と、判示しています。前段は正しいです。

後段について、同判例は

「ところで、地方自治法二条に規定された事項のうちで、本件に関係のあるのは三項七号及び一号に挙げられた事項であるが,これらの事項は相当に具体的な内容のものであるし、同法一四条五項による罰則の範囲も限定されている。しかも、条例は、法律以下の法令といつても、上述のように、公選の議員をもつて組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であつて、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。そうしてみれば、地方自治法二条三項七号及び一号のように相当に具体的な内容の事項につき、同法一四条五項のように限定された刑罰の範囲内において、条例をもつて罰則を定めることができるとしたのは、憲法三一条の意味において法律の定める手続によつて刑罰を科するものということができるのであつて、所論のように同条に違反するとはいえない。従つて地方自治法一四条五項に基づく本件条例の右条項も憲法同条に違反するものということができない。」

と、判示しています。

「条例制定権が認められるのは地方公共団体の処理すべき事務(広義の自治事務)に関する事項についてのみであり,国の事務に属し,事柄の性質上法律で定めるべきとされる事項について条例で制定することはできない。刑罰に関する手続はこれにあたり,31条の「法律」には条例は含まれないと解されている。」

辰巳法律研究所『平成29年版 司法試験&予備試験 短答過去問パーフェクト1 公法系憲法』718

  • 719頁


したがって、上記記述は、誤りです。