刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1848

乙:今日の問題は、新司法試験平成18年民事系第11問アウエオです。

Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例に関する次のアからオまでの問題のうち,Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まるものを(中略)なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。(中略)
ア. AB間の契約締結前に,Aが甲建物をCに賃貸し,引渡しを終えていた場合,AB間におい
て,BはCに対する賃料をいつから取得することができるか。
ウ. AB間の契約締結後,Eが甲建物をAから買う契約を結んだ場合,BとEのいずれが最終的
に甲建物の所有者となるか。
エ. AB間の契約締結後,Bが甲建物について引渡しや移転登記を受ける前に地震で甲建物が全
壊した場合,Bは残代金をAに支払う必要があるか。
オ. AB間の契約締結後,Bが甲建物について引渡しや移転登記を受ける前に,ABのいずれに
も無断で甲建物に住み込んだFがいる場合,A自身がFに明渡しを求めていても,BはFに対
して甲建物を自己に明け渡すように請求することができるか。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:Oh they lost themselves in lying

出典:https://youtu.be/44nTGcUxWAU

感想:アルクによると、lose oneself inは、のめり込む、没頭しきる、夢中になるなどの意味です。


乙:アについて、民法575条は

「まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2 買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。」

と、規定しています。

大判大正13年9月24日は

「民法第五百七十五条第一項ニハ未タ引渡ササル売買ノ目的物カ果実ヲ生シタルトキハ其ノ果実ハ売主ニ属ストアリテ引渡ヲ為ササル事由ニ付何等ノ区別ヲ設ケサルノミナラス元来同条ハ売買ノ目的物ニ付其ノ引渡前ニ果実ヲ生シ若ハ売主カ目的物ヲ使用シタル場合ニ買主ヨリ売主ニ対シテ其ノ果実若ハ使用ノ対価ヲ請求スルコトヲ得セシムルトキハ売主ヨリ買主ニ対シテ目的物ノ管理及保存ニ要シタル費用ノ償還並代金ノ利息ヲ請求シ得ルコトトナリ相互間ニ錯雑ナル関係ヲ生スルニヨリ之ヲ避ケントスルノ趣旨ニ外ナラサルヲ以テ此ノ趣旨ヨリ推考スルモ同条ハ売買ノ目的物ノ引渡ニ付期限ノ定アリテ売主カ其ノ引渡ヲ遅滞シタルトキト雖其ノ引渡ヲ為ス迄ハ之ヲ使用シ且果実ヲ収得スルコトヲ得ヘキト同時ニ代金ノ支払ニ付期限ノ定アリテ買主カ其ノ支払ヲ遅滞シタルトキハ勿論同時履行ノ場合ニ於テ買主カ目的物ノ受領ヲ拒ミ遅滞ニ付セラレタルトキト雖目的物ノ引渡ヲ受クル迄ハ代金ノ利息ヲ支払フコトヲ要セサルモノト謂ハサルヘカラス蓋同条第二項但書ニ目的物ノ引渡後ニ代金支払期限カ到来スヘキ場合ニ付テノ規定ヲ設ケタルニ拘ラス目的物ノ引渡ニ付期限ノ定アル場合及其ノ引渡前ニ代金支払ノ期限到来スヘキ場合ニ付其ノ区別アルコトヲ規定セサル法意ヨリ推スモ同条ハ当事者カ遅滞ニ付セラレタルト否トヲ問ハス適用スヘキモノト解スルヲ相当トスレハナリ是従来本院判例(大正四年(オ)第九〇号同年十二月二十一日第一民事部判決)ノ認ムル所ニシテ今尚維持スルヲ相当ナリト認ム斯ノ如ク売買ノ場合ニ於テ売主ハ遅滞ニ在ルト否トヲ問ハス其ノ目的物ノ引渡ヲ為ス迄ハ其ノ物ヲ使用シ且之ヨリ生スル果実ヲ収得スルコトヲ得ヘシトナス以上民法第百九十条ノ規定ハ此ノ場合ニ適用スヘキモノニアラサルコト明瞭ナルヲ以テ原院カ本件ニ付同条ヲ適用セサリシハ相当ナリ」

大判昭和7年3月3日は

「原判決ハ挙示ノ証拠ニ依リ本件家屋ノ所有権ハ上告人及被上告人間ノ売買ニ因リ其ノ当時既ニ上告人ヨリ被上告人ニ移転シタルモノナルコトヲ認定シ所論上告人ノ抗弁ヲ排斥シタルモノナレハ該抗弁ヲ前提トシテノ善意ノ占有者ノ所論ハ其ノ当ヲ得サルコト明ニシテ此ノ点ニ関スル原判示ハ正鵠ヲ失ハサルモノト云ハサルヲ得ス又民法第五百七十五条第一項ハ本来売買ノ目的物ノ引渡前ニ於テ売主ト買主トノ間ニ生スル諸種ノ錯雑ナル関係ヲ相消セシムル為設ケラレタル規定ニ相違ナキモ而モ尚衡平ノ観念ヲ度外視シタルモノニハ非ラサルカ故ニ売主ヲシテ代金ノ利用ト果実ノ取得トノ二重ノ利益ヲ獲得セシムルカ如キハ其ノ法意ニ適合セサルモノト云フヘク従テ既ニ代金ノ支払ヲ受ケナカラ尚且引渡スヘキ目的物ヲ引渡サスシテ占有スル売主ハ其ノ目的物ヨリ生スル果実ヲ取得シ得サルモノト為スヲ以テ右法条ノ律意ニ副フモノト云フヘシ然ラハ本件ニ於テハ上告人ハ既ニ代金ヲ受取リ売却シタル家屋ヲ被上告人ニ引渡スヘキ関係ニ在リナカラ其ノ引渡ヲ為ササリシモノナルコト明ナルヲ以テ該家屋ヨリ生スル果実ハ取得スルニ由ナキモノト云フヘク結局前掲民法ノ規定ハ本件ニハ其ノ適用ナキニ帰スルヲ以テ之ヲ顧ミサリシ原判決ハ結局正当ナリト云フヘシ」

と、判示しています。


ウについて

「本問のように,売主から第一譲受人(B),第二譲受人(E)に目的物が二重に譲渡される場合,すなわち二重譲渡の場合においては,対抗要件主義が適用される。対抗要件主義によれば,Bは登記なしにEに所有権を対抗できず,またEも同様である。結局,先に登記を得た方が確定的に所有権を得ることになる。」

辰巳法律研究所『平成29年版 司法試験&予備試験 短答過去問パーフェクト3 民事系民法①』
320頁


エについて、民法536条1項は

「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」

同法567条は

「売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
2 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。」

と、規定しています。


オについて

「本問でBのFに対する甲建物の明渡請求の根拠は,所有権に基づく返還請求権としての不動産明渡請求権であると考えられる。ここで,所有権に基づく返還請求権としての不動産明渡請求権が認められるためには,原告がその不動産を所有していることと,被告がその不動産を占有していることが必要である。よって,Bがこの請求権を行使し得るためには,Bに甲建物の所有権がなければならない。」

辰巳法律研究所『平成29年版 司法試験&予備試験 短答過去問パーフェクト3 民事系民法①』
321頁


したがって、上記記述のうち、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まる問題はオです。