刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1850

乙:今日の問題は、司法試験平成28年民法第8問イとエです。

甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡し
たときの不動産物権変動に関する(中略)
イ.AがEに甲土地を遺贈し,遺言により指定された遺言執行者Fがある場合において,Bが,
甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1
の持分をGに売却し,BからGへの持分移転登記を経由したときは,Eは,Gに対し,甲土地
の所有権の取得を主張することができる。
エ.Aが「甲土地はCに相続させる」旨の遺言をしていた場合において,Bが,甲土地について
法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1の持分をEに売
却し,BからEへの持分移転登記を経由したときには,Cは,Eに対し,甲土地の所有権の取
得を主張することができない。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:We're heading for a disconnect

出典:https://genius.com/Darla-jade-disconnect-lyrics

感想:アルクによると、head forは、~に向かう、~の方に進むなどの意味です。


乙:イについて、最判昭和62年4月23日は

「民法一〇一二条一項が「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定し、また、同法一〇一三条が「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定しているのは、遺言者の意思を尊重すべきものとし、遺言執行者をして遺言の公正な実現を図らせる目的に出たものであり、右のような法の趣旨からすると、相続人が、同法一〇一三条の規定に違反して、遺贈の目的不動産を第三者に譲渡し又はこれに第三者のため抵当権を設定してその登記をしたとしても、相続人の右処分行為は無効であり、受遺者は、遺贈による目的不動産の所有権取得を登記なくして右処分行為の相手方たる第三者に対抗することができるものと解するのが相当である(大審院昭和四年(オ)第一六九五号同五年六月一六日判決・民集九巻五五〇頁参照)。そして、前示のような法の趣旨に照らすと、同条にいう「遺言執行者がある場合」とは、遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前をも含むものと解するのが相当であるから、相続人による処分行為が遺言執行者として指定された者の就職の承諾前にされた場合であっても、右行為はその効力を生ずるに由ないものというべきである。」

と、判示しています。


エについて、最判平成14年6月10日は

「「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は,法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして,法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については,登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁,最高裁平成元年(オ)第714号同5年7月19日第二小法廷判決・裁判集民事169号243頁参照)。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、イが正しく、エが誤りです。